Novel

Sometimes feel like a childhood

SOMETIMES FEEL LIKE A CHILDHOOD - FM 超短編小説 10/07/24

ときどき自分が幼児の頃から何も成長していないように思う事がある。何も考えずに危うく生きて来たのか、それとも考えすぎて苦しかったのか。その両方のようでもあるし、どちらでもないような感じもする。ただ何かひとつの信念で自分の人生を貫き通せるような根性はない。それは確実にそうだと言える。ときどきひどく優柔不断だ。そんな自分を叩きつぶしてどこか誰からも見えない場所で消却したい欲求に駆られた事が何度あることか。自分は不愉快で、嘘つきで、魅力の無い人間だ。冷静に、大人ぶって、下らないオフィスワークをこなしている俺は本当にみっともない生き物だと嫌悪する。ただし、そんな奴は俺だけじゃない。視界に入るほとんど全ての人間が皆自分と同じような、いや、大抵自分以上に社会のモンスターであることも十分知っている。モンスターがモンスターを喰らう世界で生き延びる為に、自分自身をモンスター化して何が悪い。何も悪い事なんて無いよな。この世界は全て、細胞の、原子の、素粒子の、中性子のひとつひとつまで、完璧な輝きと安らぎを帯びて、優雅に無限の真空世界を漂っているじゃないか。何一つ、隣り合わせの同類に触れる事はできない。触れようとすると、電磁力やら重力やらの仲介役がおせっかいを焼いて、ぎりぎり寸前のところで今正に触れたように感じさせてくれる。この世界はおせっかいのお芝居なんだね。茶番ですよ。バーチャルほどリアルなものはない。朝に食べるモーニングも、目隠しをして食べればディナーだ。空いた腹にとってうまい事に変わりはない。そのうまいっていう感覚だって自然が創り出したマジックだ。本当に美味しいかどうかなんて誰も知らない。だけどさほら、皿から顔を上げて周りを観てご覧なさい。あそこのテーブル、窓際のところに、美味しいと絶賛してご満悦の笑みを浮かべてる紳士が居るね。そしてその横を、こんなゴミくずの何がうまいの?という顔で食器を運ぶウェイトレスが通り過ぎて行くだろ。例えば君がどちらが真実か賭けをしたとしよう。でも残念なことに両方が真実なんだ。トートロジー。そのくらい分かるよね。この斬新で安価なモーニングセットは、グルメ野郎からの絶賛に値するだけ美味で、それと同時に、10時間汗だくになったパンスト以下の価値も無いゴミくずなんだよ。そういうことが分からなきゃ、駄目だ。僕は家に帰って音楽を作るよ。この無惨な世界と残念な自分のために出来る限りの努力をしてやろう。少しでも音楽のようなものが出来上がって、それを聴いた誰かが少し心を打たれて、その笑顔を見た他の誰かがちょっとしたステップを踏んで・・・夢みたいだけど本当の事を毎日やってやるんだよ。

 

Syn Nakamura